波照間島という島をご存じでしょうか。日本最南端の有人島です。沖縄県の県庁所在地である那覇からの距離は460km。那覇から飛行機で1時間の石垣島へ向かい、その離島ターミナルから高速船に揺られて1時間半ほどで到着します。名前の語源は「果てのうるま」。果ての、珊瑚の島、という意味が一般的に知られていますが、とても素敵な響きに感じてしまいます。私は「果て」の地にとても魅力を感じていて、波照間島には2回訪れたことがあります。

この島には、ひとつの伝説が伝わっています。さらに南に「南波照間島」という島がある、という伝説です。琉球王朝の時代、この島の人々は人頭税に苦しんでいました。収入も、事情も、一切問わない。ただ頭数だけで課される税です。その重さに耐えかねた人々が舟を出し、南の海へ消えていった——そう語られています。実際に訪れた際も、この伝説に思いを馳せながら、しばし物思いにふけったことをよく覚えています。

地図を広げれば、波照間島の南にはフィリピンやインドネシアがあるだけで、南波照間島は存在しません。それでも当時の人々にとって、個々の事情を考慮しない人頭税の重さは、こうした伝説を生み出すほどのものだったのかもしれません。

今の税制に目を向けると、人的控除をはじめ、個々の事情を汲み取ろうとする仕組みが数多くあります。頭数だけで課される、いわば簡素すぎる税が存在していた時代からすれば、隔世の感があります。 私たちの仕事も、こうした個々の事情を正確に制度へ反映させることです。次に波照間島を訪れるときは、また少し違った気持ちで海を眺めることになりそうです。